弥富看護学校
植田久美先生

 愛知県の弥富(やとみ)看護学校は、7年以上の就業経験をもつ准看護師が看護師にキャリアアップするための2年課程通信制の学校です。全国に17校(2020年10月現在)しかないうちの1校で、東海北陸地方からの学生が大半を占めています。1学年定員は250名、学生の平均年齢は43.0歳、仕事や家庭と両立させながらの学習など、特有の条件下での学習指導の難しさや工夫などについて伺いました。

———授業はどのような形で進められるのでしょうか?

 通信授業は、自宅で学習するテキスト履修と、登校して学習するスクーリングがあります。スクーリングは、1科目2日(平日型と土日型で実施)×12科目(うち9科目はテキスト履修との選択制)ですが、これが非常に重要です。授業を受けることで今までの自分の看護を振り返り、気づきや発見が得られることや、学生同士が交流し関係性を深めることもできる貴重な場となっているためです。
 ところが今年度は、コロナ禍により4~5月のスクーリング科目もテキスト履修に切り替えざるを得ない状況になりました。特に1年生は入学直後から自宅でレポート課題に向き合うことになり、友達を作る場が失われてしまいました。教員としては、学生のレポートに対する添削指導やコメントに、いつも以上に力を入れました。
 臨地実習は、「紙上事例演習」「病院見学実習」「面接授業」の3つで構成されています。その中の病院見学実習は、1科目2日×8科目を学生の居住地に近い病院・施設で行います。学生の居住地が点在しているため、各地の施設に受け入れをお願いしないといけません。学生の大半が就業中で、実習先へ就職する可能性が低いという事情もあり、受け入れ先の確保が一層難しいです。

———学生さんにはどのような傾向がありますか?

 准看護師である学生は、日常業務を行うなかで、患者さんに質問されたときにきちんと答えられないことで自分の知識不足を自覚し、自己評価が低くなる人が多くいます。また何らかの強いこだわりや思いこみをもっている人もいます。学習を進めていくうえで、それらが成長の妨げになり得るのです。彼らの根本原因への直接的な介入・改善は、一朝一夕には実らないので、電話や登校時の言葉かけ・対話など意図的にコミュニケーションをとり続けることで、可能な限りフォローアップしています。
 また准看護師の特徴として、実技はできるけど根拠がわからないということが多いです。たとえば、筋注の手技はできるけど、注射部位がなぜそこでなければならないのか、人体の知識の基づいた説明ができない。入学時点でこうした実践とそれを行う根拠、特に解剖学的な知識がつながっている学生は、1割くらいでしょうか。そこで授業を通じて、実技と根拠とがつながる面白さを伝えることに尽力しています。それが伝わりさえすれば、自己学習が一気に進みます。感覚的に、最終的に8割くらいの学生は、このつながりを見出すことができているようです。

———国試対策はどのように進められているでしょうか?

 1クラス40名弱で8クラスのチューター制をしいています。1人の教員が1、2年それぞれ1クラスずつ、2年間通して受け持ちます。国試対策はそのチューター制を活かして、個別指導を行います。2年間で6回、模擬試験を実施していますが、その成績でD、E判定の学生を要支援者とし、チューターが積極的に関わります。
 学校の国試対策年間計画として、教員と外部講師で9回の対策講義を行います。具体的には、頻出項目のなかで、模試の全国正答率と自校正答率を比較し、自校が著しく低い問題を抽出。それを改変した問題とその解説資料を作って講義します。1つのテーマについて、A3見開きで、左ページに資料・右ページに改変問題を配置。左ページの資料を10分くらいかけてゆっくり説明したうえで、右ページの問題を解かせます。資料は、複数の教科書や参考書などから抜き出して配置しています。
 通信であることや学生数等の諸条件により、正直、国試合格率100%というのは相当難しいです。しかしながら、1人でも多くの准看護師を看護師として送り出せるよう、試行錯誤しながらも精進していきたいと思っています。

———さまざまな条件があるなかでベストを尽くそうと奮闘する、先生や学生さんの様子を垣間見ることができました。ありがとうございました。