合格率向上・維持につながる学習指導
合格率を向上・維持させるには、「正答率70%以上の過去問に正解する知識を身に付ける」ことが重要です。ここでは、どのようにして知識を身に付けるのが効果的なのかをご説明します。
●過去問題集の解説から知識を得る
●『レビューブック』に情報を集約
●低学力者タイプ別指導法
●早期からの対策が重要!
過去問題集の解説から知識を得る
過去問を学習する際、まずおさえておきたいのは、学習の目的は解くこと(アウトプット)ではなく解説を読んで理解すること(インプット)であるということです。小社書籍『クエスチョン・バンク』を例に、具体的な学習方法をみていきましょう。
『クエスチョン・バンク』での具体例
1問勉強して、3点とる
第98回午後40番の国家試験を例に、『クエスチョン・バンク』の使い方をみていきます。

1. まずは、問題に対しての正解選択肢の解説を読んで1点分の知識が得られます。

2. 次に間違い選択肢を読んで1点分の知識が得られます。

間違い選択肢3の解説は、第108回午後37番でも問われた内容でした。
1.鼻カニューレ
2.フェイスマスク
3.ベンチュリーマスク
4.リザーバー付酸素マスク
3. 最後に解説の「基本事項」を読んで1分の知識が得られます。

ベンチュリーマスクの基本情報については、第105回午前24番、第104回午前43番でも問われた問題でした。この場合、「2点分」ですね。
酸素流量の設定と併せて吸入酸素濃度を調節するのはどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④
1.最適な酸素流量は18L/分である。
2.酸素流量に関係なく加湿器が必要である。
3.24~50%の安定した吸入酸素濃度が得られる。
4.マスクに空気を溜めることのできるバッグがある。
このように、選択肢解説に加え「基本事項」「補足事項」まで読み込んで理解することで、その項目のポイントとなる知識をおさえることができ、違う切り口で問われた場合にも対応する力がつきます。本例は出題された問題のみでご説明しましたが、項目ごとのポイントをおさえれば、未知の問題への対応力も間違いなく向上します。
『レビューブック』に情報を集約
『看護師・看護学生のためのレビューブック』は、看護国試で出題される全範囲を一冊にまとめた参考書です。オススメする使い方は、『レビューブック』内に、「問題集で間違えたところ」「模試で間違えたところ」「講義・実習で学んだこと」の情報を集約させることです。これらの情報が集約されたものが、自分に足りない知識を補うための専用の「マイ・レビューブック」になります。

マイ・レビューブックの例

マイ・レビューブックの作り方の例として、以下のようなやり方があります。
①マーカーの色にルールを設ける
緑:授業で大事と言われたところ
ピンク:過去問で間違えたところ
オレンジ:覚えたかあとでチェックしたいところ
②付せんやプリントを貼り付ける
以下、『レビューブック』「マイ・レビューブック」に関する記事をまとめましたのでよければご活用ください。
●レビューブックの使い方
●マイ・レビューブック ギャラリー
●マイレビューブック大賞
●マイ・レビューブックを作ろう!
低学力者タイプ別指導法
学生さんは十人十色。性格や価値観などさまざまです。ここでは、8つのタイプ別にオススメの指導方法を紹介していきます。
原案:塚本恭正先生(岩手医科大学看護学部)
イラスト:マキゾウ
A 自分のやり方にこだわりをもつ傾向がある

どのような指導方法がよいか?
教員の話を受け付けないタイプですが、学生さん自身が納得できる具体的な勉強方法などを提案しその効果を示すことができれば、成績向上につながります。たとえば「 一緒に問題を解き、その答えを導き出すための思考経路を示し 、理解させる」などです。
<効果的な教材>
『クエスチョン・バンク』
『クエスチョン・バンク Select 必修』
B 教員と話をしたがらない

どのような指導方法がよいか?
下位層を集めて補講したり、仲間と一緒に勉強させたりしてそれを見守りましょう。
C 自尊心が低い

どのような指導方法がよいか?
学習の達成度を共有してもらい、ほめましょう。
<効果的な教材>
『 Study Schedule』 (レビューブック 付録 )
D 家庭、交友関係など、プライベートに問題を抱えている

どのような指導方法がよいか?
学生さんが打ち明けやすいよう配慮し、抱えていることについてカウンセリングをしましょう。その学生さんが信頼する教員がいたら、その先生にカウンセリングを任せることも考慮しましょう。
E 自ら勉強する習慣があるのに成績が上がらない

どのような指導方法がよいか?
効率の悪い学習方法をしている可能性があるため、学習の様子(ノートや教材など)を見せてもらい助言をしましょう。
<効果的な教材 >
『なぜ?どうして?』
F 自ら学習する習慣がない

どのような指導方法がよいか?
放課後などを利用して数人の仲間と学習するなどグループ学習を促しましょう。
グループ学習中、教員はときどき見回り、おしゃべりしていたりしないか確認しましょう。自分たちに教員が関心を持ってくれているということを学生さんに意識づけられます 。
G 勉強の仕方が適切でない

どのような指導方法がよいか?
問題を一緒に解くなど、答えを導き出す思考経路を指導しましょう。定期的に達成度を確認しながらほめたり励ましたりしましょう。
<効果的な教材>
『きほんのき』 (レビューブック 付録 )
WEBサイト『がんばれ 看護学生 !』
H クラス全体で、国試対策の機運が高まっていない

どのような指導方法がよいか?
クラス運営を見直し、国試対策オリエンテーションなどで学習する雰囲気を作っていきましょう。そのほか、クラス目標を掲げることも有効です。同じ目標に向かって一体感・仲間意識をかもし出し、学生間の協力を促すことができます。
早期からの対策が重要!
第109回看護師国家試験・第106回保健師国家試験の採点サービス『ネコナースの合格予報』でアンケートを取ったところ、本格的に国試対策を始めた時期は最終学年の12月が最多でした。ただし、この開始時期に関して、「もっと早くから取り掛かればよかった」「取り掛かるのが遅すぎて後悔した」という声も多数寄せられました。
受験生の声
専門「12月前まで実習があり、本格的に集中して取り組むのが遅かった。スキマ時間をもっと有効に使うべきだった」
大学「国試と卒業研究、就職活動、実習をうまくバランス良くするのができなくて、国試を本格的に始めるのが遅くなった」
早期から対策を始めるには、低学年から実習等と並行して国試対策を始めるのがよいでしょう。そのためには、カリキュラムが国試対策に直結していると効率が良いと思われます。
また、早期から対策を始めると、どうしても国家試験に対してのモチベーションが下がりがちになります。学校全体で継続して学生さんの成長を見守っていくような対応が必要です。
合格率向上・維持につながる学習指導のまとめ
- 過去問題集『クエスチョン・バンク』の解説でインプット
- 『レビューブック』に情報集約
- 低学力者には個々のタイプに応じた指導
- 国家試験対策は低学年からコツコツと