看護過程における看護計画の個別性を学ぼう
看護過程を学んでいると必ず出てくる「個別性」というキーワード。でも、「個別性」って何?実習指導や学校の先生に「患者さんの個別性が反映されてない」なんて言われても、どうしたらいいの?という方も多いのではないでしょうか。
「個別性」への理解は、複数の患者さんの状態を比較したり、何人もの患者さんを受け持つことで深まります。ここでは、2人の患者さんの異なる部分を比較して「個別性」を学んでいきましょう。「個別性」という言葉が理解しづらい場合、「患者さんによって異なる部分」や「患者さん同士の違い」と表現すると少し理解しやすくなるかもしれません。
同じ看護問題でも原因が異なれば、看護計画も異なる
ここでは、年齢・性別・疾患・治療が同じ自然気胸患者さんに挙げられた同じ看護問題「不眠」への看護計画を比較して、「個別性」を学んでいきます。立案した看護計画に違いが表れるポイントとなるのは、「不眠」の原因です。まずは、YさんとOさんとで異なる情報に注目して、それぞれの「不眠」がどのような状態なのか、「不眠」を解消するためにどんな看護計画が立てられたのかを把握しましょう。
事例紹介


看護計画に「個別性」が反映されたのはなぜ?
YさんとOさんは、年齢・性別・疾患・治療が同じでしたが、入院してからの睡眠状況に違いがありました。Yさんは、ドレーンによる身体的不快感が原因で早朝覚醒をしています。一方Oさんは、退院後の生活に関する不安が原因で入眠困難や熟眠困難がみられています。
アセスメントで導かれた「不眠」という看護問題名だけみると、2人の問題は同じにみえますが、不眠の状態や原因は異なります。つまり、そこには「個別性」があるということです。
そして、目標や成果は、「不眠」という問題名だけでなく、不眠の状態や原因、それらの根拠となった情報に基づき設定します。そして、その目標・成果を達成するために必要な看護計画を立てるため、目標や成果、看護計画にもおのずと「個別性」が反映されるのです。
看護介入は問題の原因に介入するのが原則なので、問題の原因が異なれば、看護介入も異なるということはわかりやすいと思います。
「目標・成果・成果指標の設定」についておさらいしたい人はこちら
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つまり、看護計画に「個別性」が反映されていないということは、患者さんの情報に基づいてアセスメントができていない(今回の場合だと、問題の原因を正しく把握できていない)か、正しくアセスメントができていてもそのアセスメント内容に基づいて正しく目標や成果の設定、看護計画の立案ができていないということです。
みなさんも看護計画を立案する際に、事例や標準看護計画が掲載された書籍を参考にすることがあると思いますが、書籍の丸写しの看護計画だとなぜ先生から指導されるのか、この説明で理由がわかったのではないでしょうか?
当然のことながら書籍に書いてある看護計画には、どんな患者さんでも当てはまる看護介入や掲載事例の情報に基づいた看護介入が書いてあり、みなさんが受け持っている患者さんの情報に基づいた看護介入は書かれていないのです。
常に患者さんの情報をもとに考えると「個別性」が表れる
「個別性」のある看護計画を立てるには、看護過程の各ステップにおいて、患者さんの情報をもとに考えることが重要です。また、この記事では触れていませんが、患者さんの「強み」を生かした看護計画を立てることで、より「個別性」のある看護計画を立てることができるでしょう。
「個別性」は事例も含め様々な患者さんの看護過程を行うことで、患者さんごとの違いを見つけ、より理解を深めていけるものだと思います。『看みえ④』とともに看護過程の考え方を身につけ、いろんな患者さんの看護過程を行い、「個別性」のある看護を提供できるように学んでいきましょう。
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●看護過程における「看護計画の立案」で行うことは何ですか?
●日常生活のできごとからみた看護の個別的な介入のヒント
●書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』の事例からみえてくる個別性
『看護がみえるvol.4』参照ページ
●「人間の反応」の個別性について知りたい→p.14
●コラム:日常生活のできごとからみた看護の個別的な介入のヒント→p.245
●コラム:YさんとAさんの事例からみえてくる個別性→p.358
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