看護計画の具体的な援助内容から個別性を学ぼう
看護過程を学んでいると必ず出てくる「個別性」というキーワード。でも、「個別性」って何?実習指導や学校の先生に「患者さんの個別性が反映されてない」なんて言われても、どうしたらいいの?という方も多いのではないでしょうか。
「個別性」への理解は、複数の患者さんの状態を比較したり、何人もの患者さんを受け持つことで深まります。ここでは、2人の患者さんの異なる部分を比較して「個別性」を学んでいきましょう。「個別性」という言葉が理解しづらい場合、「患者さんによって異なる部分」や「患者さん同士の違い」と表現すると少し理解しやすくなるかもしれません。
患者さんの情報が異なれば、援助内容が異なる
ここでは、同じ看護問題「水分摂取量不足による便秘」が挙げられた患者さんへの援助内容を比較して、「個別性」を学んでいきます。
2人に共通する看護問題とそこから導かれた目標・成果、看護計画

2人に共通する看護問題は「水分摂取量不足による便秘」です。また、便秘の症状も2人とも同じであるとして対症的な介入は省略し、原因への根治的な介入である「水分摂取量を増やすための看護計画」のみを取り上げることにします。
立案した看護計画に違いが表れるポイントとなるのは、「便秘」の原因である「水分摂取量不足」の根拠となった患者さんの情報です。まずは、DさんとEさんとで異なる情報に注目して、それぞれの「水分摂取量不足」がどのような状態なのか、「水分摂取量不足」を解消するためにどのような看護計画が立てられたのかを把握しましょう。
事例紹介


2人の「個別性」はどこから表れた?
看護問題「便秘」から導かれた目標、成果は2人とも同じだったのになぜ援助内容は異なっているのでしょうか。それは、看護問題の原因「水分摂取量不足」の根拠となった情報や基礎情報が異なるためです。
便秘の原因である「水分摂取量不足」が具体的にどのような状態か、2人の情報をみていくと、摂取不足の理由が異なりました。Dさんは、骨折による杖歩行で、歩行に時間がかかるため、なるべくトイレに行きたくないと考え、水分を摂っていませんでした。一方Eさんは、軽度認知障害で水分摂取することを忘れてしまい、摂取量が不足していました。つまり、水分摂取を阻害している要因が異なったため、水分摂取量を増やすための看護計画にも違いがみられています。この違いこそ「個別性」なのです。
このように、同じ看護問題でも、その看護問題の根拠となった患者さんの情報によって具体的な援助内容は変わるのです。そして、そこに「個別性」が表れます。だからこそ、同じ看護問題でも成果や成果指標を立て、計画を立案する際には、その都度、患者さんの情報をもとに考えないといけません。また、この記事では触れていませんが、患者さんの「強み」を生かした看護計画を立てることで、より「個別性」のある看護計画を立てることができるでしょう。
「個別性」は事例も含め様々な患者さんの看護過程を行うことで、患者さんごとの違いを見つけ、より理解を深めていけるものだと思います。『看みえ④』とともに看護過程の考え方を身につけ、いろんな患者さんの看護過程を行い、「個別性」のある看護を提供できるように学んでいきましょう。
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●書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』の事例からみえてくる個別性
『看護がみえるvol.4』参照ページ
●「人間の反応」の個別性について知りたい→p.14
●コラム:日常生活のできごとからみた看護の個別的な介入のヒント→p.245
●コラム:YさんとAさんの事例からみえてくる個別性→p.358
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