直腸癌事例(Aさん)の活動-運動パターンのアセスメント記述例
書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』(以下、『看みえ④』)の事例解説を読んで、レポート用紙に実際にアセスメントを書くときはどうしたらいいの?と困ってしまった方、必見です!
ここでは、Aさんの活動-運動パターンのアセスメント(『看みえ④』p.293)の書き方を紹介します。この記述例と解説をもとに、誰がみてもわかりやすい、かつ過不足のないアセスメントの書き方を学んでいきましょう。
Aさんの健康知覚-健康管理パターンのアセスメントの記述例
Aさんのコーピング-ストレス耐性パターンのアセスメントの記述例
Aさんの活動-運動パターンに関する情報
Aさんは、50歳の男性、ステージⅡの直腸癌で直腸切断術とストーマ造設のために入院した患者さんです。アセスメントの前に情報をみておきたい人は、『看みえ④』p.292をみるか、こちらで確認しておきましょう。
Aさんの情報はこちら


※身体活動に関する情報のうち,運動習慣に関する情報はない.
※余暇活動に関する情報はない.
Aさんの活動-運動パターンのアセスメント記述例
アセスメントの記述は、内容によって色分けしています。

大きく3つの視点に分けて記述したときの例を示します。スクロールすると、それぞれの記述のポイントを解説しているので、それも必ずチェックしましょう!(PCの方は、解説アイコンをタップすると直接解説に飛びます)
身体活動

日常生活活動(ADL)

余暇活動

Aさんの活動-運動パターンのアセスメント記述例と解説
それでは、Aさんの活動-運動パターンのアセスメントの記述例と解説をみていきましょう。
必ずおさえよう、アセスメントの視点
まずは、『看みえ④』で示している活動-運動パターンのアセスメントの視点を確認しましょう。この視点で考えると、アセスメントの方向性(結論)が定まり、アセスメントが書きやすくなりますよ!はじめてアセスメントを書く場合、まず赤字部分の「アセスメント項目」ごとに書いていきましょう。
活動-運動パターンのアセスメントの視点 | |
---|---|
身体活動は適切か | 身体活動状況は適切か |
活動耐性は適切か | |
運動習慣は適切か | |
日常生活活動(ADL)は自立しているか | |
余暇活動は適切か |
また、Aさんのように手術を受ける患者さんの場合、これらのアセスメントの視点に加え、術前か術後かで、考慮すべき視点が異なります。

このような視点を考慮してアセスメントするには、術後合併症(『看みえ④』p.268)などの知識が必要になります。Aさんのアセスメントに必要な知識について詳しく知りたい方は、『看みえ④』p.256〜276 を参照してください。
また、この術前の視点をもとに活動-運動パターンで具体的に考慮すべきことについては、「活動-運動パターンで想定しうる看護問題の例」(『看みえ④』p.291)や、「活動-運動パターンで想定しうる協働問題の例」(『看みえ④』p.291)の項目を確認してください。
「身体活動状況」のアセスメント

解説① 書き出しに、「アセスメント項目」を書く
記述の最初に、「アセスメント項目」(黄緑下線)を示すと何について書かれているのかわかり読みやすくなります。ここだけでなく、すべての「アセスメント項目」においても同様です。
解説② 「身体活動状況は適切か」の視点で解釈したことを書く
まずは解釈の記述です。解釈では、「Aさんの身体活動状況は適切か」という視点で、Aさんの状態をとらえます。適切か/適切でないか、また、意欲・願望を示すのか、解釈したことを具体的に書きましょう(緑下線)。また、解釈の根拠となった情報(青下線)を必ず書きましょう。情報の記述がないと、なぜそのように考えたのか他の人には伝わりません。
解釈で現在のAさんの状態がわかったら、次は分析の記述です。

解説③ 「適切な身体活動状況」が今後どうなるか、なりゆきを書く
次になりゆきを推論した結果を記述します。現在みられるAさんの「適切な身体活動状況」が、今後どうなるのか具体的に書きましょう(オレンジ下線)。Aさんの場合、これから手術を行うため、術後のことも含めて推論していきます。また、「転倒」、「離床が遅れる」といった良くないなりゆきが考えられていますが、現在のAさんに危険因子がないため、リスク型問題には挙がりません。
※分析(原因、誘引・強み・なりゆきを明らかにすること)のうち、原因・強みについての記載はありませんが、基本的には「解釈」の結果が適切でも不適切でも、原因、誘引・強みの分析は行います(不適切だった場合は、必ず原因への言及が必要です)。今回の事例では、特に目立った原因・強みがみられていないため記述していません。
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「活動耐性」のアセスメント

解説④ 「活動耐性は適切か」の視点で解釈したことを書く
解説①・②をふまえ、記述の最初に「アセスメント項目」(黄緑下線)を書き、「Aさんの活動耐性は適切か」という視点でとらえたAさんの状態を書きましょう(緑下線)。ここでも、解釈の根拠となる情報(青下線)を忘れないでください。
解釈で現在のAさんの状態がわかったら、次は分析の記述です。

解説⑤ なりゆきを推論してわかったリスク型問題を書く
リスク型問題は、実在型問題と異なり、現在みられるAさんの「適切な活動耐性」が今後どうなるか、なりゆきを推論することでわかります。推論には、Aさんのような術前患者さんの場合、術後の状態も含まれます。術後合併症(『看みえ④』p.268)や想定しうる問題(『看みえ④』p.291)などを参考に考えてみましょう。
推論の結果、現在のAさんは「適切な活動耐性」ですが、肥満を危険因子とした「呼吸器合併症」と「深部静脈血栓症・肺塞栓症」という良くないなりゆきが考えられるため、リスク型問題(ピンクマーカー)が挙げられます。問題に挙げることは何か、危険因子が何かを必ず記述しましょう。

解説⑥ 「適切な活動耐性」が今後どうなるか、なりゆきを書く
解説⑤のリスク型問題以外に、術後も含めたなりゆきを推論した結果を記述します。現在みられるAさんの「適切な活動耐性」が、今後どうなるのか具体的に書きましょう(オレンジ下線)。解説③同様、良くないなりゆきが考えられても、現在のAさんに危険因子がなければ、リスク型問題には挙がりません。
※「身体活動状況」の分析と同様、「活動耐性」の分析において、今回の事例では、特に目立った原因・強みがみられていないため記述していません。
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「運動習慣」のアセスメント

解説⑦ 情報不足の場合に、根拠のない解釈を書かない
もれなくデータ収集することは大切ですが、一度にすべてのデータを収集することは難しいです。現在のAさんの状態を解釈する時点で、情報が不足していて追加のデータ収集もできない場合は、無理に根拠のない解釈を書こうとせず、情報不足の旨を書きましょう。もちろん追加のデータ収集ができる場合は、データ収集を行い解釈・分析することでAさんの状態をより理解できます。
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「日常生活活動(ADL)」のアセスメント

解説⑧ 「日常生活活動(ADL)は自立しているか」の視点で解釈したことを書く
他のアセスメントと同様に、記述の最初に「アセスメント項目」(黄緑下線)を書き、「Aさんの日常生活活動(ADL)は自立しているか」という視点でとらえたAさんの状態を書きましょう(緑下線)。ここでも、解釈の根拠となる情報(青下線)を忘れないでください。
解釈で現在のAさんの状態がわかったら、次は分析の記述です。

解説⑨ 「自立している日常生活活動」が今後どうなるか、なりゆきを書く
最後になりゆきを推論した結果を記述します。現在みられるAさんの「適切な健康管理状況」が、術後も含めて今後どうなるのか、具体的に書きましょう(オレンジ下線)。ここでも良くないなりゆきが考えられていますが、現在のAさんに危険因子がないため、リスク型問題には挙げていません。
※「身体活動状況」の分析と同様、「日常生活活動(ADL)」の分析において、今回の事例では、特に目立った原因・強みがみられていないため記述していません。
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「余暇活動」のアセスメント

解説⑩ 情報不足の場合に、根拠のない解釈を書かない
解説⑦と同様、現在のAさんの状態を解釈する時点で、情報が不足していて追加のデータ収集もできない場合は、無理に根拠のない解釈を書こうとせず、情報不足の旨を書きましょう。もちろん追加のデータ収集ができる場合は、データ収集を行い解釈・分析することでAさんの状態をより理解できます。
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この記事を読んで、アセスメントが書けそうかもと少しは思えましたか?
アセスメントを苦手と感じる人は多いですが、何をどんなふうに考えて、書けばよいのかわかれば難しいことはありません。『看みえ④』とともに、アセスメントの核となる「人間の反応」の解釈・分析をマスターして、看護過程を楽しく学んでいきましょう。
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●Aさんのコーピング-ストレス耐性パターンのアセスメントの記述例
『看護がみえるvol.4』参照ページ
●「人間の反応」とは何か?→p.12
●「人間の反応」の解釈について知りたい→p.92
●「人間の反応」の分析について知りたい→p.95
●原因・誘因の分析、強みの分析の手順を知りたい→p.96
●なりゆきの分析について知りたい→p.99
●Aさんについて知りたい(事例紹介)→p.247〜255
●Aさんのアセスメントについて知りたい→p.278〜322
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