コラム:看護診断「ボディイメージの混乱」の“ 混乱” って?
NANDA-I 看護診断の「ボディイメージ混乱」は、“心の中に描き出される自分の姿・形が混乱している状態※”と定義されています。この“心の中に描き出される自分の姿・形が混乱”する、とはどのような状態なのでしょうか。
ボディイメージの混乱を次のように勘違いしている人が多いかもしれません。
例えば、書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』の事例のようにお腹にストーマが造設されて身体の見た目が変化したケースや,交通事故で足を切断することになってしまったケース……患者さんがこのような身体変化を認識し、変化した身体と以前の身体との違いにとまどっている状態、これをボディイメージの混乱ととらえることです。
このように「変化する前の身体に対するイメージ」と「変化した後の身体に対するイメージ」との間でとまどっていることは、ボディイメージの混乱ではないのです。正しくは、「患者さんの身体に対するイメージ」と「現在の身体あるいは実際に起きた身体的変化」との間で混乱が生じている状態、これをボディイメージの混乱といいます。
何が違うのか,というと「現在の(変化した)自分の身体を、患者さんが自身の身体として認識できているかどうか」です。
例えば、ストーマ造設後、自分のストーマを見ながら「これが自分の肛門なんだなぁ…何だか変な気分だな」という患者さんの声が聞かれたとすれば、とまどいはみられますが、身体的変化を認識できているからこその発言だと考えられます。このように、身体的変化にあわせてボディイメージが変わっていくことは、良いことなのです。
一方で、自分の身体機能の変化を認識できず、これまで通り排便できると思って便座に座り「便が出ないんだ」と言ったり、ストーマを全く見ようとしなかったり……他にも、実際はやせているのに自分は太っていると間違った認識をしていたり、切断された足があると思って歩こうとしてみたり、ということも身体的変化にあわせてボディイメージが変化できずに混乱しているといえます。
ボディイメージの混乱についての理解が少し深まったでしょうか。この知識を生かして、患者さんを適切に理解できるようになっていきましょう。
※NANDA-I 看護診断-定義と分類2018-2020 原書第11 版より
(『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』 p.303より一部改変して掲載)
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自己知覚-自己概念パターン | p.64 |
