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コラム:看護のアセスメントにおける2つの臨床推論

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コラム:看護のアセスメントにおける2つの臨床推論
『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』 コラム
2020.06.29

コラム:看護のアセスメントにおける2つの臨床推論

「アセスメントって複雑で、何をするのかわからない」と思われる方が多いのではないでしょうか。書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』(以下、本書)では、段階を追って思考を積み上げていけるように、1つ1つ具体的なステップでアセスメントの思考を解説しています。

例えば、初めて学ぶ人にとって「栄養-代謝パターン」(アセスメントの枠組み項目)をアセスメントしなさいと言われても、何を具体的にアセスメントすればよいかわからないかもしれませんが、食習慣は適切か、栄養摂取量は適切かなどといった「アセスメントの視点」に示された、細かい視点で考え始めることならできるのではないでしょうか(下記の表参照)。本書では、このように細かい視点で考えたあと、栄養状態と身体の代謝のバランスを考える「アセスメントの枠組み項目」(栄養-代謝パターン)へと思考段階が進みます。そして、最後に患者さんの健康状態について全人的に考える段階へと進みます。つまり、この思考方法は細かい視点から徐々に大きな視点へと視野を広げていく方法です。これは、知識や臨床経験の少ない初学者であっても、もれなく「人間の反応」※注 を理解することが可能です。

アセスメントの視点に必要な情報項目 アセスメントの視点 アセスメントの枠組み項目 アセスメントの枠組み

一方、知識や臨床経験が豊富な看護師は、少ない情報しかなくても重要なポイントを見極めることができます。そのため、書籍の示す流れに従って細かい視点ごとの解釈・分析を行う必要もなく、最初からゴードンの機能的健康パターンの健康知覚-健康管理パターンや栄養-代謝パターンといった「アセスメントの枠組み項目」ごとに大まかに機能的かそうでないかのを判断することができます。そして、このように大まかにとらえた後、健康に関する認識や、食習慣や栄養摂取量といった詳細な項目に絞って、問題を引き起こす原因や誘引などを解釈・分析し、健康上の問題を導くのです。つまり、この思考方法は、広い視点から 「人間の反応」※注 を判断し、重要なポイントを見極めたうえで徐々に細かい視点を解釈・分析していきます。これは、書籍で紹介した方法とは逆の思考法です。

実は、どちらの思考も臨床推論の方法論の1 つです。書籍で紹介しているのは徹底的検討法といいます。その名の通り、徹底的に全ての項目について検討していくわけです。知識や臨床経験が豊富な看護師が行うのは、仮説演繹(えんえき)法です。これは、ある程度の情報を得た段階で仮説を立てて、それに基づいてさらなるデータ収集を行って仮説検証を行う方法です。

徹底的検討法と仮説演繹法は、どちらが優れているというわけではなく、臨床においては場合によって使い分ける必要があります。過去に経験したことのあるような患者さんの場合は、仮説演繹法を使う方がより早く問題を把握することができるかもしれません。しかし、経験したことのない患者さんの場合は、徹底的検討法を使う方が問題を見落とさない可能性は高いでしょう。また、何度やっても仮説検証がうまくいかなければ、途中で仮説演繹法から徹底的検討法に切り替えることも必要かもしれません。

ただし、仮説演繹法を行うためには、豊富な知識と臨床経験だけでなく、矛盾のない仮説検証をするクリティカルシンキングの能力も不可欠で、トレーニングが必要です。本書を手にしている看護学生の皆さんは、まずは徹底的検討法を使って多くの事例から学び、知識と臨床経験を蓄えましょう。そのなかでクリティカルシンキングを鍛え、いずれは仮説演繹法もできる看護師を目指してください。

※注
「人間の反応」:健康状態の変化やライフプロセスの影響を受けて生じる感情や行動、生理的反応、他者との関係性などのことをさす。その人の現在の健康状態やこれまでのライフプロセスに影響を受けるため、「人間の反応」は一人一人異なる。国際的に看護診断の研究を行っているNANDA-Iは、「看護診断の焦点は人間の反応である」としている。また、アメリカ看護師協会(ANA)は「看護とは、現にある、あるいはこれから起こる可能性のある健康問題に対する人間の反応を診断し、手当てすることである」と定義している。

『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』p.105より一部改変して掲載)

関連するキーワードと『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』の対応ページ

キーワード 対応ページ
 アセスメントの視点  p.48
 アセスメントの枠組み項目  p.48
 臨床推論  p.23
 クリティカルシンキング  p.19

 

看護がみえるvol.4 看護過程の展開

第1版 B5判 380頁
定価(本体3,300円+税)
ISBN 978-4-89632-801-1
発行日 2020-06-30

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コラム:看護のアセスメントにおける2つの臨床推論

『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』 コラム
2020.06.29

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「アセスメントって複雑で、何をするのかわからない」と思われる方が多いのではないでしょうか。書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』(以下、本書)では、段階を追って思考を積み上げていけるように、1つ1つ具体的なステップでアセスメントの思考を解説しています。

例えば、初めて学ぶ人にとって「栄養-代謝パターン」(アセスメントの枠組み項目)をアセスメントしなさいと言われても、何を具体的にアセスメントすればよいかわからないかもしれませんが、食習慣は適切か、栄養摂取量は適切かなどといった「アセスメントの視点」に示された、細かい視点で考え始めることならできるのではないでしょうか(下記の表参照)。本書では、このように細かい視点で考えたあと、栄養状態と身体の代謝のバランスを考える「アセスメントの枠組み項目」(栄養-代謝パターン)へと思考段階が進みます。そして、最後に患者さんの健康状態について全人的に考える段階へと進みます。つまり、この思考方法は細かい視点から徐々に大きな視点へと視野を広げていく方法です。これは、知識や臨床経験の少ない初学者であっても、もれなく「人間の反応」※注 を理解することが可能です。

アセスメントの視点に必要な情報項目 アセスメントの視点 アセスメントの枠組み項目 アセスメントの枠組み

一方、知識や臨床経験が豊富な看護師は、少ない情報しかなくても重要なポイントを見極めることができます。そのため、書籍の示す流れに従って細かい視点ごとの解釈・分析を行う必要もなく、最初からゴードンの機能的健康パターンの健康知覚-健康管理パターンや栄養-代謝パターンといった「アセスメントの枠組み項目」ごとに大まかに機能的かそうでないかのを判断することができます。そして、このように大まかにとらえた後、健康に関する認識や、食習慣や栄養摂取量といった詳細な項目に絞って、問題を引き起こす原因や誘引などを解釈・分析し、健康上の問題を導くのです。つまり、この思考方法は、広い視点から 「人間の反応」※注 を判断し、重要なポイントを見極めたうえで徐々に細かい視点を解釈・分析していきます。これは、書籍で紹介した方法とは逆の思考法です。

実は、どちらの思考も臨床推論の方法論の1 つです。書籍で紹介しているのは徹底的検討法といいます。その名の通り、徹底的に全ての項目について検討していくわけです。知識や臨床経験が豊富な看護師が行うのは、仮説演繹(えんえき)法です。これは、ある程度の情報を得た段階で仮説を立てて、それに基づいてさらなるデータ収集を行って仮説検証を行う方法です。

徹底的検討法と仮説演繹法は、どちらが優れているというわけではなく、臨床においては場合によって使い分ける必要があります。過去に経験したことのあるような患者さんの場合は、仮説演繹法を使う方がより早く問題を把握することができるかもしれません。しかし、経験したことのない患者さんの場合は、徹底的検討法を使う方が問題を見落とさない可能性は高いでしょう。また、何度やっても仮説検証がうまくいかなければ、途中で仮説演繹法から徹底的検討法に切り替えることも必要かもしれません。

ただし、仮説演繹法を行うためには、豊富な知識と臨床経験だけでなく、矛盾のない仮説検証をするクリティカルシンキングの能力も不可欠で、トレーニングが必要です。本書を手にしている看護学生の皆さんは、まずは徹底的検討法を使って多くの事例から学び、知識と臨床経験を蓄えましょう。そのなかでクリティカルシンキングを鍛え、いずれは仮説演繹法もできる看護師を目指してください。

※注
「人間の反応」:健康状態の変化やライフプロセスの影響を受けて生じる感情や行動、生理的反応、他者との関係性などのことをさす。その人の現在の健康状態やこれまでのライフプロセスに影響を受けるため、「人間の反応」は一人一人異なる。国際的に看護診断の研究を行っているNANDA-Iは、「看護診断の焦点は人間の反応である」としている。また、アメリカ看護師協会(ANA)は「看護とは、現にある、あるいはこれから起こる可能性のある健康問題に対する人間の反応を診断し、手当てすることである」と定義している。

『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』p.105より一部改変して掲載)

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 アセスメントの視点  p.48
 アセスメントの枠組み項目  p.48
 臨床推論  p.23
 クリティカルシンキング  p.19

 

看護がみえるvol.4 看護過程の展開

第1版 B5判 380頁
定価(本体3,300円+税)
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発行日 2020-06-30

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