A.様々な出来事や健康状態に応じて患者さんが示す、あらゆる反応のことです。「人間の反応」を診断し、適切に対処することが看護師独自の役割です。

「人間の反応」とはどういうもの?

『看護がみえるvol.4 看護過程の展開(以下、看みえ④)』では、患者さんの「人間の反応」に主眼をおいて看護過程を展開する方法を示しています。「人間の反応」というと特殊な用語のようで身構えてしまうかもしれませんが、次のイラストで示した例は全て「人間の反応」です。

図1(看みえ④p.12より)

実習で出会う患者さんやペーパーペイシェントにみられる「不安」や「痛み」、「不適切な食行動」、「良好な人間関係」など、あらゆる反応が「人間の反応」なのです。健康を害する「人間の反応」もあれば、逆に健康を支えてくれる「人間の反応」もあります。このなかで看護師が独自に介入すべき「人間の反応」が、看護問題です。

苦痛や自立度低下といった好ましくない「人間の反応」を改善・予防し、適切な自己管理などの好ましい「人間の反応」を維持・促進していくことが、看護師に求められる役割といえます。

アセスメントの枠組み項目は「人間の反応」を示す

その役割を果たすためには、個々の患者さんが示している「人間の反応」がどのような状態なのかを理解し、看護問題を把握する必要があります。とはいっても、無数にあってとらえどころのない「人間の反応」を、何の手がかりもなく理解するのは困難です。そこで役に立つのが、ゴードンの11の機能的健康パターンや、ヘンダーソンの14の基本的欲求などの「アセスメントの枠組み」です。アセスメントの枠組みは、看護に必要な「人間の反応」をもれなくリスト化したものです。どの「人間の反応」が治療や看護ケアを必要としているのか明らかにするために有用なツールとなります。ただ、アセスメントの枠組みが提供する「人間の反応」は「健康知覚−健康管理パターン」のように示す反応が広くて具体的にわかりにくい部分があります。そこで看みえ④では、アセスメントの枠組みを細かくわけて具体的に示した「アセスメントの視点」を用意しました。本書では、アセスメントの視点ごとに「人間の反応」を解釈・分析して問題を明らかにする方法を紹介しています。

また、患者さんの「人間の反応」が何に対する反応なのか、どのような背景があるのかを知ることで、さらに理解しやすくなります。

「人間の反応」は健康状態とライフプロセスの影響を受ける

患者さんは一人一人異なる人生経験をもち、置かれている状況や健康の度合いも様々です。看みえ④では、患者さんのこれまでの経験を「ライフプロセス」と呼んでいます。また、身体的・精神的・社会的な状態を含む「健康状態」についても解説しています。
患者さんは、個別の「ライフプロセス」と「健康状態」に応じて様々な「人間の反応」を示します。そのため、患者さんがどのようなライフプロセスをもち、どのような健康状態にあるのかを知ることで、「人間の反応」を理解しやすくなるのです。また、患者さんを多様な面からみて全人的にとらえることにもつながります。

図2(看みえ④p.9より)

NANDA-Iやアメリカ看護師協会も「人間の反応」に言及

看護師が「人間の反応」に着目することは、看みえ④のオリジナルの考えではありません。世界で最も広く用いられる看護診断を開発しているNANDA-Iは、看護診断の焦点は「人間の反応」であるとして、次のように述べています。

看護診断とは、個人・家族・集団・地域社会(コミュニティ)の健康状態/生命過程に対する反応およびそのような反応への脆弱性についての臨床判断である。(第9回NANDA大会にて採択、2013年改訂)

NANDA-Iが示している看護診断は全て、「人間の反応」についての診断です。

また、アメリカ看護師協会(ANA)は「看護とは、現にある、あるいはこれから起こる可能性のある健康問題に対する人間の反応を診断し、かつそれに対処することである」と述べています。看護師は疾患を診断することはありませんが、「人間の反応」を診断して適切に対処するという責任を負っているのです。

このように「人間の反応」は、「看護とは何か」「看護師独自の役割は何か」を考えるうえで欠かせない概念です。

日本における看護師の役割と「人間の反応」

日本では、保健師助産師看護師法において看護師の役割が定められています。ここで定められた看護師の業務には「診療の補助」と「療養上の世話」があり、「人間の反応」に対する看護師独自の介入は「療養上の世話」に含まれます。看みえ④では、看護師独自の介入と医学的介入を比較して次のように示しています。


図3(看みえ④p.10より)

関連するQ&A

看護過程において、「人間の反応」を理解する必要があるのはなぜですか?
健康上の問題と看護問題の違いは何ですか?
看護過程におけるアセスメントとは何ですか?

『看護がみえるvol.4』参照ページ

●「人間の反応」に着目した患者さんのとらえ方について詳しく知りたい→p.9
●ライフプロセスと健康状態について詳しく知りたい(具体例あり)→p.11
●「人間の反応」の分類と具体例→p.12、p.13
●「人間の反応」の個別性(具体例あり)→p.14
●健康上の問題と看護問題の違いとは?→p.41
●様々な法律、職能団体、理論家による看護の定義→p.2
●NANDA-I看護診断とは?→p.117

 

 
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看護がみえるvol.4 看護過程の展開

第1版 B5判 380頁
定価(本体3,300円+税)
ISBN 978-4-89632-801-1
発行日 2020-06-30